黄昏
はぜると碧流丸。いろんな終わり。
夕涼み。西日がゆっくりと京を沈めていく。町並みは人々の賑わいに包まれながらも、永遠の静寂が人を幽冥へと誘う、その狭間。縁側に出て、世界がゆっくりと呑まれていくのを待つだけの時間。
それは、あまりに唐突に訪れた。
「碧兄さん。私さ、たぶん冬まで持たないと思うんだよね」
「……え?」
「だからね。私が朱点倒すの、ムリだと思うんだ」
何を言っているのか、わからなかった。ただ、ことばが文字となり、空虚に響くのを、他人事のようにじっと眺めてた。
「いきなり、何を言ってるんだ、はぜる。なにかあったのか?」
「ううん、何もないよ。ただ、最近体の調子? 感じ? が前と違うんだよね。あ、これはそういうことかな、って」
そういうことって、どういうことだ。声を張り上げたくなる衝動をぐっとこらえた。だというのに、一言も喋ってないのに、口の中が急速に渇いていく。
「……お前、少し疲れてるんだよ。若兄さんや黄流がいなくなって、弱気になるのは分かる。おれだって、
「ううん、違うの」
俺の最期の願いをも、はぜるは切って捨てた。
「そういうんじゃなくってね。これは私じゃないなって。何となくだけど、分かっちゃったの」
分かっちゃったって、何だよ。全然わからないよ。叫びたかったけど、うまく声が出ない。そんな俺を見て、はぜるは悲しく笑う。さっきまでは、少しもそんな素振りなんて見せなかったのに。
「……ゴメンね」
話は終わりだとばかりに、はぜるが部屋へと戻っていく。いつの間にか、さっきまでの喧騒は、すっかりなりをひそめていた。
じくじくとした気持ちが心を埋める。まるで、毒を受けたように。
その毒は容赦なく襲いかかり、俺の望み、心の奥底の望みを白日に曝す。
……生きて、欲しかった。
それが叶わぬというのなら、せめて。