京のあいどる
あくまり。アイドルの始まり。
あくあちゃん、泣かないで。
あのね。私もね。お母さんがいなくなっちゃった時、とっても悲しかったんだ。でもね、きっとみんな優しいから。みんながしてくれたみたいに、あくあちゃんが悲しくならないように、私もがんばるから。
……どうしよう。
ううん。
あっ、そうだ。
ねえ、あくあちゃん。一緒に歌おう? あのね、私たち二人で、京の人たちの前で歌うの。キラキラした服を着て、かわいくお化粧して。そしたら、きっと楽しいよ。
……キラキラ?
うん! キラキラ! どんなに悲しくても、一緒に歌えば大丈夫だよ! 私がついてるから! ね?
……うん。
知ってる? こういうの、舶来の言葉で「あいどる」っていうんだって。これから私たち、京のあいどるだね!
あいどる?
うん! 二人そろってねえ、あくあまりんズ、とかどう?
……あくあ、まりんず?
うん!!
ねえ。まりんちゃん。
私、今とっても悲しいんだ。悲しくて、悲しくて。どうすればいいのかもわからない。だからね。あなたが教えてくれた通り、歌を歌ったよ。
でも、なんでかな。ちっとも悲しい気持ちが収まらないんだ。
「……まりんちゃん。私一人じゃ、あくあまりんズになれない。アイドル、出来ないよ……」
神様。どうかお願いです。
まりんちゃんを返してください。