垣根の垣根の百物語

PSP俺屍Rの自分の一族とか某inb氏の一族の話とか ネタバレあります。

慢心 ~1019年 七月~

七月になりました。依然、葵の健康度は下がっています。今月までの命かも知れない。しかし、来月には子供が来る。そして、黒鉄右京様の優しさも受け取ってきました。葵は、琳太郎がいなくなってからここに来て初めて、心の余裕を得たと言ってもいいと思います。

 

 

だから彼女は、人生の最後にわがままを言う余裕があったんじゃないかな、そう思っています。

最後の出陣。九重楼、鳥居千万宮と道中の首領格を潰してきました。双翼院にはたどり着ける場所にはそのような鬼はいないし、残るは白骨城。幸いにも、今月姿を現し始めます。

 

葵は焦りからとはいえ、父に負けぬよう前だけを見て突き進んできたのは確か。自分の代で白骨城でも武勲をあげ、父の名を背負うに恥じない人間であることを父に見せなければならない、そう考えていたと思います。次の当主は誰を想定していたのでしょうか……。

 

そうして今月は白骨城の出陣。隊長は当然。その脇を山茶花梵天の双子が固めます。

そして!!!!何と言っても菊梧の初陣です!!!!!!本当にごめん。ここまで留守番で不満もたまっていたことでしょう。頑張ってもらわないといけません。

彼には鎧通しを持たせ、いい防具で固めました。とはいえ初陣。気は全く抜けません。

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白骨城って夏しか出ないですけど、周りの土地も一緒に消えるんですかね。鬼はどこにいくんでしょうか……。まあそんなこと、葵ちゃんは気にしないと思うんですけど。

 

ということでやってきましたのは白骨城。夢残ヶ原にいるような雑魚はもはや相手にするまでもない実力をつけています。ブンブン刀をもう拾っていることもあり、ここで戦う敵に旨味は残っていないので、駆け抜けました。

赤い火も出なかったのですが、特に問題はありません。菊梧が動く前に、鉄クマ大将くらいだったら三人が一撃で屠ってくれます。

 

余裕だ。いける。私はそう思いました。そして、それはおそらく、葵も。

 

そして、アシゲの祭壇。始めてみる場所。嫌な雰囲気。皆が気を引き締めていました。だから、突然に大きな骨が降ってきても、みな平静だったと思います。

葵は冷静に祖父・源太の力を借ります。敵を切り裂く強烈な一撃を食らって尚、立ちはだかる恨み足。

山茶花梵天丸の連撃で一気に沈める。そのつもりでした。

ただ、思ったよりもはるかに敵は固く、タフでした。山茶花ではまともにダメージが通らない。梵天丸もそこまで速いわけではない。

その中で私は、相手に力を溜める余裕を与えてしまいました。恨み足の強力な一撃。

 

菊梧が、倒れました。

血の気が引いたのは、私だけではないでしょう。一族全員の時間が一瞬止まりました。

ただ、次に攻撃に転じたのは梵天丸。いち早く彼が行動し、鬼に切りかかります。

そこから順々に、山茶花、葵が我に返って攻撃を続けました。それでもなかなか倒れない恨み足。私はここで、「全然ギリギリの戦いの中でやられたわけじゃない」事に気づきました。それからしばらくの攻防が続いて、やっと恨み足は沈みました。

そのままありったけの泉源氏で菊梧の体力を回復したのちは、鉄クマを順々に切って捨てながら時間を過ごし、月の終わりを待ちました。この時何を得たかはよく覚えていません。

 

そして、帰還。

生死の境をさまよった菊梧は、なんとか一命をとりとめました。

しかし、初めて一族が鬼に殺される可能性に直面した彼ら。その空気は重苦しいものでした。

そして、唯一の朗報は葵が何とかこの月を生きて終えることができたこと。一族にとっては望外のできごとでしょう。ただ、それも死にかけた菊梧の前では、表立って喜べる者はいませんでした。

特に、葵。油断は禁物だと分かっていたはずなのに。自分が我儘を言ったこのタイミングで。もう死にゆく身でしかない自分のせいで。初陣の菊梧を、当主なのに。

そんな思いはきっと葵の中に、重く、深く、のしかかっていることと思います。